雪組トップコンビ、朝海ひかる(コムちゃん)と舞風りら(まーちゃん)の
退団公演を観てきた。
ポスターの段階で雰囲気的にデカダンな感じを狙ってるのが
分かっていたけれど、
とにかく芝居幕開きの美術、装置、演出が
凝りまくってる・・・植田景子先生の真骨頂ここにあり!って感じ。
心配していた電飾装置はこのお芝居では
常に紗幕のような役割を果たしていて違和感はない。
このおかげで舞台転換がかなりスピーディー。
色目や色調などはかなり気を遣ってあるとみた。
このお芝居はコムちゃんのお披露目だった『春麗の淡き光に』のような
勧善懲悪や親子もの、答えが最後にきちんと出るタイプの作りではない。
だから「主人公は一体、何がしたかったの?」なんて問い詰める人には向かない芝居だ。
もちろん、キリスト教を題材に選んでいるけれど作りが浅いし
ビジュアルにこれだけ拘ってる割に植田景子先生の書く台詞は
言葉の選び方が単純で工夫が全く感じられないのは否めない。惜しいよなあ。
しかし、しか~し植田景子先生はこのお芝居を
今の雪組にアテガキ、書き下ろしてくれたのは間違いない。
主だった役ほとんど全てが雪組生徒さんにぴったりはまって
舞台上で生きているのがよく分かるだけにリピート組にはたまらない。
コムちゃん演じるルシファーは
人間を作る神に反抗して天上界から追われた、という台詞でもあるように
神が自分より人間をどうして愛するのか?と
人間に対して、その愚かさ醜さを常にあざ笑っている。
その一方で神の愛に飢え、拗ねて、寂しがる銀橋での孤独な元天使の風情は
コムちゃんの持ち味そのまま。
スサノオの時もそうだったけれど、
コムちゃんの、麗しいがクールな見た目とのギャップがそのまま役に生きている。
例えて言うなら、萩尾望都さんの「ポーの一族」の永遠の少年吸血鬼エドガーと
だぶってみえた。(そういえばパーソナルブックでエドガーの扮装、してましたね。)
そして出番が少ない、衣装は3着いたってシンプル・・・と
一部では気の毒がられていた盲目の娼婦(元バレエダンサー)リリス役は
まーちゃんの役者としてのの集大成。
死の床についてなお、毅然とした心の美しさを感じる、
劇中の「私は全てを受け入れます」の一言は
拗ねたルシファーの心を揺さぶり、優しく癒すだけの説得力ある台詞でした。
まーちゃんって普段の可愛らしさやダンスの時の寄り添い系よりも
断然、大人の女性役が似合う役者さんだったのに
今まではどうしても可愛い典型的な娘役ばかりで勿体無かった。
全ツ『銀の狼』で演じた人妻の役でようやく、報われた気がしたけれど
この退団公演でようやく、アテガキしてもらえたようで
観ていて本当によかったよかった、と私も嬉しかった。
リリスは盲目なだけに、真実を直感で見抜く。
何も言わず部屋にに入ってきたルシファーに対して
「暖かい光が入ってきた」と言ったり、堕天使のルシファーに向かって
「それ(聖書)を読んでくださらない?」とお願いしたり・・・
その直感にはルシファーもたじたじ。
このあたりのリリスの在り方はこのお芝居の骨子じゃないかなあ?
装飾のあるドレスや出番の多さといった、目で見えるものに惑わされては
いけないって暗に言われてるような気にもなります・・・・
このダンサーコンビのラストに相応しく、最後の『光のパ・ドゥドゥ』では
ホリゾント一杯をスモーク焚いて、真っ白の衣装で踊る様は
本当に本当に美しくて心が洗われるような場面だった。
ここの振り付けが素晴らしくて大好き。
コムちゃんの背後、幕が開いて歩いてくるリリスは裸足に真っ白なワンピース姿。
(このワンピースドレスが生地が高そうなフレアの入り方で
胸元にクリスタルのネックレスのような縁飾りが素敵。私、欲しいです。)
盲目で亡くなったリリスが交差した腕で目を覆うようにして
ゆっくり歩いてくるのだけれど
その腕をルシファーがゆっくり解いてあげる。
もう、この動作だけで何にも台詞が無くても私にはグッと来てしまったくらい。
リリスはここで初めてルシファーの姿を見て
「光の天使」と呼ぶのだけれど、偶然にもそれはルシファーの追放前、
天上界での呼び名だったのですよね。
このリリスに、つい救いを求めるように
「私のために踊ってくれるか?」とお願いして、踊り始めるリリスには
神々しいくらいの輝きと母性も感じます。
『光のパ・ドゥドゥ』でのコムまーデュエットは
ジャンプのタイミングや足の角度の揃い方が気持ちいいくらいぴったりあっていて
2人の表情もいいですよね。
そしてルシファーの手に頬づりをしてゆっくり光の道を去っていくリリスと
その後姿を見つめるルシファーの寂しく、
それでもどこか満たされたようなな背中の表情には涙しちゃうんだよなあ。
朝海ひかる、という男役はけして器用でなく
観客にストレートに愛を訴えることもあまりしなかった。
ついでに言えば、夢の世界のタカラヅカの中でも
地上からいつも10センチくらい浮遊した雰囲気で
生活臭どころか生身の人間らしくなく
どんなに熱い芝居をしていても、端整な男役らしさを大切に持つがゆえに
体温が伝わりにくい役者さんだった。
それでも私はそんな、或る意味ストイックで不器用なコムちゃんの男役が
大好きだった。
前公演『ベルサイユのばら』のオスカル役で
まるで漫画から抜け出たような金髪の美麗女剣士を演じたのを観た時、
コムちゃんの何かが変わったのを感じた。
天使じゃなくて、女神のようだった。
あれはコムちゃんの最高傑作だった。
ショーで特出アンドレ役だったおささんと
並んで階段を下りる姿を観て
私には「これでコムちゃんは一つステージ、上がっちゃったな」と思えた。
そのベルばら公演後に、退団発表を聞いた時
覚悟はしていたけれど、泣いてしまった。
私の愛した天使がタカラヅカから居なくなってしまうんだなあ、と。
トップになる前から、
それこそ香港公演で私を釘付けにした天使は
この『堕天使の涙』で手の届かない場所へ飛び立っていく。
私を置いて・・・
さようなら、コムちゃん。
今までの舞台であなたのくれた、驚きにも似たたくさんの感動はけっして忘れないよ。
(いや、まだご贔屓が居るから、まだまだ私のタカラヅカ通いは続きます・・・。)
ご贔屓、及び芝居、ショーの箇条書きはまた後日。
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